読書教育NPO団体Dor til Dorの代表理事
⸻自己紹介をお願いします。
東大寺学園高等学校3年の谷津凜勇(たにつ りんゆう)です。高校では生徒会長や文化祭実行委員、文芸部の部長などをしていました。学校外でもいくつかの学生団体やNPO法人に所属しつつ、本や教育に関する活動をしています(詳細:https://lit.link/rinyut)。
趣味は読書と一人旅、冬ならスキーとスノーボードにもよく行きます。特技は、1を聞いて10を知り8で出力することです。テスト期間には勉強よりも読書がはかどってしまいがちで、いつも「ハリー・ポッター」シリーズ全11冊を読み切ってしまいます(笑)
⸻活動内容や、それに至った経緯を教えて下さい。
読書教育NPO団体Dor til Dor(ドア・チル・ドア)を設立して代表理事を務めています。
きっかけは、2020年の春に見舞われたコロナ禍による臨時休校でした。学校からは課題が時々送られてくるだけで、オンライン授業なども無かったので、ものすごく暇になったんです(笑)
そこで、ふと本棚の隅にあった児童文学に手をのばしました。久しぶりに『ツバメ号とアマゾン号』などの昔好きだった子ども用の本を読むと、その世界の楽しさに改めて気づかされたんです。
とにかく暇だったので、何か新しいことを始めようと思い、絵本や児童書を紹介するフリーペーパー「月あかり文庫」を創刊しました。
本当に趣味の一環で始めた活動だったのですが、どんどん反響が大きくなって予想以上にフリーペーパーの設置場所が広がっていったので、もっとサステナブルに大きく活動していきたいと思うようになりました。
そこで、学校司書や児童文学作家、絵本雑誌の編集者など、社会人の仲間を集めてNPO団体Dor til Dorとして2021年の春に再出発しました。
今では、子どもたちに本の楽しさを届けるため、フリーペーパー「月あかり文庫」の発行を中心に、イベント開催なども併せて情報発信をしつつ、よりよい読書教育を模索するため、研究事業も行っています。
「月あかり文庫」は現在、日本全国の書店や図書館など70ヶ所にて設置・配布していて、累計発行部数は1万5千部ほどになります。
こうした活動が評価されて、NHKや教育新聞等に取り上げられたり、世界最大・最古の社会起業家ネットワークASHOKAからユースベンチャーに認定されていたりもします。コロナ禍で始めた趣味が僕の人生を変えた、と言えると思います(笑)
読書教育を通し、子どもの自己形成・自己実現を支えていきたい
⸻本の魅力とは何だと考えますか?
何よりも「本の世界に没頭できる」のが醍醐味です。
これまで4000冊ほど絵本や児童書を読んできましたが、本を開くだけで、日常を離れて、過去へも未来へも、ヨーロッパへもアメリカへも、そして異世界へも旅ができますよね。そんな別世界に浸ることができるワクワクを実感しているからこそ、今の活動に繋がっています。
さらに、その没頭の中で、「憧れ」が見つかると考えています。本というのは、映画などとは異なり能動的に想像力を働かせなければ楽しめないツールです。
そんな物語の中で、往々にして新しい考え方やものの見方、価値観に出会うと思いますが、それを受け取るかどうかが1人1人に委ねられている、というのが大きな特徴だと考えています。
今の自分がもっている世界観とは合わない考え方や価値観は想像しなくても、十分に物語の世界を楽しめるので、そうしたものに出会っても必ずしも受け取らなくても良いんです。
逆に、もし新しい「何か」に触れて共鳴したら、今の自分に合っているけれども、今の自分はまだ持っていない新しい「何か」を想像することによって取り込んでいけるんです。したがって、「現在の自分」の延長線上にいる「憧れの自分」に出会えるのではないでしょうか?
僕は、そうした本の良さを生かして、読書教育を通して子どもたちの自己形成・自己実現を支えていきたいと考えています。
⸻高校に通いながら活動されているとのことですが、普段活動していくなかで心がけていることはありますか?
僕自身、何か一つのことにのめり込んでしまうタイプなので、例えば文化祭活動が忙しいときには授業中でも文化祭のことを考えてしまったり、逆にDor til Dorの活動が面白くなっているときには文化祭準備中でもパソコンを開いて仕事していたりします。
なので、「両立」はできていないかもしれませんが、「今はこれを本気でやって、こっちは後でちゃんと補おう」という感じで、メリハリをつけて色々なことを頑張るようにしています。言うは易く行うは難し、なので偉そうには言えませんが……(笑)
将来は、読書教育の起業家かつ研究者としてアプローチしていきたい
⸻高校卒業後に考えている進路などがあれば教えて下さい。
研究と実践を行き来しながら活動していきたいと考えています。これまで、立ち止まることなくとにかく走り続けてきてしまった感覚があるので、まずは学術的な視点から自分なりの読書教育を模索するために、大学と大学院には進学するつもりです。
⸻今後の展望があれば教えて下さい。
今抱えている課題感に対して、読書教育の起業家かつ研究者としてアプローチしていきたいです。
活動している中で実感した現在の学校現場の課題として、朝の一斉読書や読書感想文のように本を読むプロセスを子どもたちに丸投げするか、国語の精読のように一文一文細かく読解していくか、と二極化してしまっている、というのが挙げられます。
これでは、子どもたちが日々の読書の中でどのように本を楽しめばいいのかを知ることができないんです。
また、実際にフリーペーパーで紹介した本を集めてコーナーを展開してくださる書店や図書館もあるのですが、やはり、図書館や書店などの課題として、子どもたちに対してどのように本を手渡せばいいのかがわからないという現状があるのだと思います。
将来は、こうした学校教育の限界を補完するような読書教育プログラムを子どもたちに提供したり、図書館や書店の課題を解決するような読書空間のコンサルティングをしたりしていきたいと考えています。
⸻記事を読んでくださった方へのメッセージや宣伝などはありますか?
これは僕自身も意識していることですが、「目の前のことにワクワクできているか?」を常に確認しながら、あなたが本心から全力で頑張れることに挑戦してほしいです。楽しんでやっているうちに、きっとあなたの人生が変わっていくはずです。
あと、宣伝ですが、最近Dor til Dorのメンバーの牧野礼が『六四五年への過去わたり 平城の氷と飛鳥の炎』(くもん出版)を出版いたしました。平城京と飛鳥・大化の改新を結ぶタイムスリップファンタジーで、ドキドキ感がたまらない1冊です。
こういう記事を読むと「私はこんなにすごい人じゃないから……」と思ってしまう人がいるかもしれませんが、そういう人にこそぜひ読んでほしいです。
そもそも僕自身もまだまだ「すごい人」ではないですが、そんな別に「すごい人」ではない普通の人でも、世界を少しずつ変えていけるんだ!と勇気をもらえる作品となっています!
- Dor til Dor公式サイト(http://dor-til-dor.org)
- 個人Twitter(https://twitter.com/Rinyu_DtD)
コメント